脳神経外科ジャーナル
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総説
VHL病に伴う中枢神経系血管芽腫
中村 英夫倉津 純一執印 太郎
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2013 年 22 巻 1 号 p. 52-60

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抄録

 Von Hippel-Lindau (VHL) 病は中枢神経系に血管芽腫が発生するだけでなく, 全身性に嚢胞や腫瘍が認められる疾患であり, 神経線維腫症と並んで脳神経外科医が携わる代表的な遺伝病である. 常染色体優性遺伝の形式をとり, 浸透率がほぼ100%であるVHL病は3番染色体上の腫瘍抑制遺伝子であるVHL遺伝子の異常が原因で起こるということが1993年に報告された. それ以来, VHL遺伝子にて翻訳されるタンパク質のさまざまな機能が解明された. 最も代表的な機能としては, hypoxia inducible factor (HIF) -1αの制御であり, 正常酸素圧において水酸化を受けたHIF-1αをユビキチン化酵素であるVHLタンパクが認識し, いくつかのタンパク質と共同して分解する. HIF-1αは転写因子でありvascular endothelial growth factor (VEGF) などの発現を誘導するために, VHLタンパクの機能異常が起こると, 血管新生が制御されなくなることが血管芽腫の発生にかかわると考えられている. VHL病はほかの臓器にも嚢胞や腫瘍が形成されるために, その診断, 治療において他科と協力して行う必要がある. その治療の適応やタイミング等を考慮するうえで何らかの役に立つように, VHL病に伴う中枢神経系血管芽腫における最近の治験をレビューする.

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© 2013 日本脳神経外科コングレス
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