脳神経外科ジャーナル
Online ISSN : 2187-3100
Print ISSN : 0917-950X
ISSN-L : 0917-950X
22 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
特集 血管奇形の基礎と臨床
  • 菊田 健一郎
    2013 年22 巻1 号 p. 4-10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/25
    ジャーナル オープンアクセス
     手術で治療困難なAVMとは, high-grade (Spetzler-Martin grade IV, V) であるが, 出血を繰り返したり症状が進行性のため手術を考慮しなければならない症例と, low-grade AVMであるが手術リスクが高いと判断されるAVM, と考えることができる. 後者の手術リスク評価には拡散テンソルtractographyなどの画像診断が有用と考えられた.
  • 城倉 英史, 川岸 潤
    2013 年22 巻1 号 p. 11-18
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/25
    ジャーナル オープンアクセス
     定位放射線治療によりAVMの完全閉塞を得るには, ナイダスの境界部に照射される線量が決定的に重要である. 大きなAVMの場合被曝する周囲正常脳の体積が増大するため, 放射線合併症を避けるためには十分な線量を与えられず結果として完全閉塞率は低下する. この問題を克服するため多分割照射, 寡分割照射, 低線量治療後の残存ナイダスに再治療を追加する方法, あらかじめナイダスを分割して治療する方法が試みられている. 特に後2者は一定の成果を挙げているが, 完全閉塞まで長期間を要しその間の出血リスクが問題となる. 進歩を続けている治療装置, 治療計画コンピューターを用い最新の塞栓術を併用することにより出血率の低下が期待される.
  • 宮地 茂
    2013 年22 巻1 号 p. 19-27
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/25
    ジャーナル オープンアクセス
    ・AVM塞栓術の適応は限定されるが, 後治療の安全性を高める目的に合致した, 無理のない手技による施行は有用である.
    ・Radiosurgery前の塞栓術の有効性については議論があるが, radiosurgeryに適したサイズへの縮小, 処理しにくいcomponentの治療, 再開通の起こりにくい塞栓方法, 適切なplanningを行えば有用である.
    ・近年は術前の危機管理, 血管構築の適切な把握により合併症の頻度は減少しているが, 不慮の導出路閉塞による出血性合併症には十分留意する必要がある.
    ・治療困難なhigh grade AVMでも, risk factorのある出血例においてtargetをしぼった塞栓術とブースターとしてのradiosurgeryは病態増悪を予防できる可能性がある.
  • 高木 健治, 石田 光明, 岡部 英俊, 野崎 和彦
    2013 年22 巻1 号 p. 28-36
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/25
    ジャーナル オープンアクセス
     Cavernous malformationは孤発性であっても遺伝的背景をもつ疾患であり, その原因となる主要な遺伝子も特定されている. その発生には生殖細胞期だけでなく体細胞期にも変異が起こることが必要であると推察されている (two-hit mechanism). 病理学的考察から手術所見でみられる形態の差違 (mulberry-like and hematoma-like appearance) は病変の出血形式の差から生じるものと考えられる. 治療のfirst-lineは外科的摘出であるが, 脳幹部や深部などの病変に対する手術には治療リスクを考慮した十分な検討が必要である. 定位放射線照射は手術摘出困難例に対するsecond-lineの治療となりうる.
  • 杉生 憲志, 平松 匡文, 徳永 浩司, 菱川 朋人, 大熊 佑, 春間 純, 清水 智久, 伊達 勲
    2013 年22 巻1 号 p. 37-43
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/25
    ジャーナル オープンアクセス
     硬膜動静脈瘻では脳・脊髄の硬膜上に動静脈短絡が形成され, その症状と予後は主として静脈側によって規定されることから, 静脈導出路の形態に基づく分類が臨床的にも重要である. 特に脳表静脈に逆流がみられる例では, 早急な治療が必要とされる. 治療は手術, 放射線, 血管内治療が単独, または併用で行われてきたが, 現在ではその中心的役割を担うのは血管内治療である. 一般に, 病変が静脈洞壁に存在するsinusal type (海綿静脈洞部や横静脈洞部など) では罹患静脈洞をコイルで閉塞する経静脈的塞栓術 (TVE) が, 静脈洞のない硬膜上に存在するnon-sinusal type (前頭蓋底やテント部, 脊髄など) では液体塞栓物質で瘻孔部を閉塞する経動脈的塞栓術 (TAE) が主流となる. 血管内治療で根治が困難な, あるいは治療リスクの高いnon-sinusal typeに対して, 手術による瘻孔閉塞 (静脈側の凝固切離), あるいは状況によっては定位的放射線治療が行われる.
  • 何が治せて何が治療困難か
    松丸 祐司, 原 貴行, 松村 明
    2013 年22 巻1 号 p. 44-51
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/25
    ジャーナル オープンアクセス
     脊髄血管は, 中心溝動脈を分枝し脊髄の広い部分を灌流する前脊髄動脈と脊髄表面を栄養する後脊髄動脈が, vasa coronaとarterial basketで連絡している単純な構造であり, 全身麻酔による脊髄血管造影はその理解に有用である. 脊髄硬膜動静脈瘻は, 静脈圧亢進による脊髄症状で発症し, 塞栓術または外科手術で根治可能である. 脊髄動静脈奇形は, 疼痛や出血で発症することが多く, 傍髄動静脈瘻や終糸動静脈奇形は塞栓術または外科手術で根治可能であるが, 髄内動静脈奇形の根治は困難である. 頭蓋頚椎移行部動静脈瘻はくも膜下出血や静脈圧亢進による脊髄症状で発症し, 硬膜動静脈瘻と傍髄動静脈瘻があり, 主に外科治療による根治が可能である.
総説
  • 中村 英夫, 倉津 純一, 執印 太郎
    2013 年22 巻1 号 p. 52-60
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/25
    ジャーナル オープンアクセス
     Von Hippel-Lindau (VHL) 病は中枢神経系に血管芽腫が発生するだけでなく, 全身性に嚢胞や腫瘍が認められる疾患であり, 神経線維腫症と並んで脳神経外科医が携わる代表的な遺伝病である. 常染色体優性遺伝の形式をとり, 浸透率がほぼ100%であるVHL病は3番染色体上の腫瘍抑制遺伝子であるVHL遺伝子の異常が原因で起こるということが1993年に報告された. それ以来, VHL遺伝子にて翻訳されるタンパク質のさまざまな機能が解明された. 最も代表的な機能としては, hypoxia inducible factor (HIF) -1αの制御であり, 正常酸素圧において水酸化を受けたHIF-1αをユビキチン化酵素であるVHLタンパクが認識し, いくつかのタンパク質と共同して分解する. HIF-1αは転写因子でありvascular endothelial growth factor (VEGF) などの発現を誘導するために, VHLタンパクの機能異常が起こると, 血管新生が制御されなくなることが血管芽腫の発生にかかわると考えられている. VHL病はほかの臓器にも嚢胞や腫瘍が形成されるために, その診断, 治療において他科と協力して行う必要がある. その治療の適応やタイミング等を考慮するうえで何らかの役に立つように, VHL病に伴う中枢神経系血管芽腫における最近の治験をレビューする.
原著
  • 研修終了後アンケートから
    井上 雅人, 平光 宏行, 宮原 牧子, 寺野 成彦, 山口 玲, 宮城島 孝昭, 赤尾 法彦, 大野 博康, 岡本 幸一郎, 原 徹男
    2013 年22 巻1 号 p. 62-67
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/01/25
    ジャーナル オープンアクセス
     新卒後医師臨床研修が開始され, 多くの研修医が各科をローテーションしている. 脳神経外科は研修が必須ではないが, 希望者が研修を受けている. 一方で, 外科系医師の減少が問題となっている. そこで, 当科をローテーションした研修医にアンケートを行い, 研修医が脳神経外科研修に何を望んでいるのか, 何に満足したのかなどを調査した. 結果は, 「集中治療・重症患者管理」や「病棟での手技」などが期待が高く, 実際満足度も高かった. このような研修医の声から, 研修の場を提供する脳神経外科医も, 改善できるところは改善し, より多くの研修医が研修を希望する環境を作り, さらには, 脳神経外科を目指す医師を増やしていくことが望まれる.
神経放射線診断
feedback
Top