抄録
63歳, 男性. くも膜下出血にて当院に救急搬送され, 破裂遠位前大脳動脈瘤に対しコイル塞栓術を施行した. 術中に留置コイルが親血管内に軽度脱出し, 血栓症をきたしたため, オザグレルナトリウムとアスピリンを投与し血栓消退が得られたが, 治療5週間後に遅発性にコイル脱出の増悪を認め, 外科治療を要した. 術中・術後のコイル脱出は比較的まれであるが, ときに遠位塞栓や親血管閉塞をきたし, 広範囲脳梗塞や死亡につながる注意すべき合併症である. コイル脱出時の対処法と術中血栓症に対する抗血栓療法, コイル塞栓術後の直達手術について検討し, 文献的考察を加え報告する.