脳神経外科ジャーナル
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23 巻, 6 号
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特集 脊髄・脊椎外科の基本とfrontier
  • 菅原 卓
    2014 年23 巻6 号 p. 462-467
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
     頚椎症, 椎間板ヘルニア, 後縦靱帯骨化症などの頚椎変性疾患に対する外科治療は大きく頚椎前方手術と後方手術に分類される. 本邦で広く行われている前方手術はanterior cervical discectomy and fusion, anterior cervical corpectomy and fusion, anterior cervical foraminotomy, 後方手術はcervical expansive laminoplasty, posterior cervical fixationであるが, それぞれの術式の一般的な適応を紹介し, 前方・後方アプローチ選択に関するエビデンスを整理し, 個々の症例についての適応を検討した.
  • —よりよい手術成績を得るためのわれわれの工夫—
    金 景成, 井須 豊彦, 國保 倫子, 森本 大二郎, 岩本 直高, 千葉 泰弘, 菅原 淳, 小林 士郎, 森田 明夫
    2014 年23 巻6 号 p. 468-475
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
     腰部脊柱管狭窄症は罹病率の高い疾患であり, 時に外科治療が優れた治療効果を発揮することから, 安易に外科治療が行われてしまうこともあるが, 自然経過を十分理解したうえで保存療法を基本とし, 手術は低侵襲に行うべきである. 外科治療は後方支持組織を可能なかぎり温存し, 適切に神経根を除圧することを目的とすべきで, 決して脊柱管の除圧のみで満足すべきではない. 一方固定術は, 明確なエビデンスのない状況下ではその適応は慎重にすべきである. 手術後は, 術後残存症状を後遺症と安易に決めつけるのではなく, 末梢神経障害などの合併に注意し, 長期の経過観察のもと適切に対応する能力をつけるべきである.
  • 西浦 司, 伊丹 尚多, 大西 学, 大塚 真司, 日下 昇, 荻原 浩太郎
    2014 年23 巻6 号 p. 476-483
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
     支持性の破綻した胸椎椎体骨折や脊髄を前方より圧迫する胸椎変性疾患に対しては, 脊髄を圧排せず必要十分な術野が確保できる胸椎前方到達法は重要な手術選択肢である. しかし, 近年の脊椎後方インスツルメントの発達に加え, 脊椎への到達の容易さから後方手術が選択されることが多くなり, また, 前方到達法は不慣れな点と侵襲の大きさが強調されて, 広く行われていない. しかし, 後方到達法のみでは対処できないケースも少なくなく, 脊椎外科医にとって胸椎前方到達法は避けて通れない術式と考える. われわれはこれまで100例余りの胸椎前方到達法を経験し, 前方からは主に胸膜外到達法を行ってきた. 本稿ではその基本手技を提示し, 前方到達法の意義について概説する.
  • —穿孔術からBKPまで—
    川西 昌浩, 横山 邦生, 山田 誠, 田中 秀一, 伊藤 裕
    2014 年23 巻6 号 p. 484-491
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
     保存的治療に抵抗している有痛性の骨粗鬆症性圧迫骨折に対して, 椎体内に医療用骨セメントを注入する椎体形成術が, 1990年代から行われている. 本邦でも2011年よりバルーンを併用した椎体形成術が保険認可され, 急速に広まりつつある. 椎体形成術は低侵襲な治療方法ではあるが, 治療の成功には患者選択がきわめて重要で, その適応決定には保存的治療に抵抗する体動時痛の存在とmagnetic resonance imaging (MRI) での浮腫像の確認が必須である. 椎体形成術がシャム手術に比べて有用性を見出せないとするrandomized controlled trial (RCT) が発表され一時期議論となったが, 患者選択を厳密にしたRCTでは, 除痛効果, activity of daily living (ADL) 向上効果ともに保存的加療と比べて優ると報告され椎体形成術の有効性が証明された.
     また, 骨セメントを注入せずに穴を開けるだけの穿孔術が, 圧潰の進行していない圧迫骨折に対して除痛効果を示すことがわかってきた. 穿孔術は, 術後の新規骨折の頻度は低いため, これまで椎体形成術の適応外とされていた急性期症例でも保存的加療に併用してよいと考えられる. ただし, 圧潰が進行している例や偽関節例では, 穿孔術の除痛効果は椎体形成術に比べ劣るため, 椎体形成術が適応となる. バルーンカイフォプラスティでは, セメントの漏れの頻度が椎体形成術に比して少ないといえるが, 椎体高の回復力や後弯復元力は術中の体位による影響を加味した検討が必要といえる.
     今後, 適応の拡大, 注入物質の改良などにより椎体形成術のさらなる改善が見込まれ, 同治療が圧迫骨折に苦しむ患者の予後を改善する治療となることが期待される.
原著
症例報告
  • 林 宣秀, 三木 潤一郎, 山家 弘雄, 仲 寛, 今栄 信治, 中尾 直之
    2014 年23 巻6 号 p. 504-509
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
     脳脊髄液漏出症は諸検査を施行しても硬膜破綻部位の同定が困難である場合が少なくない. 治療方針決定のためにも硬膜破綻部位の同定に特異度の高い検出法が必要である. 今回, T2*反転画像で硬膜外髄液漏出がくも膜下腔と連続する所見が得られ, 硬膜破綻部位を推定できた. これは腰椎穿刺手技や薬剤が不要で, 単時間かつ非侵襲的に施行可能な単純MRI検査である. さらに硬膜修復の程度までも把握でき, 治療のみならず治療効果判定にも有用であった.
  • 河井 伸一, 竹本 光一郎, 小林 広昌, 阪元 政三郎, 東 登志夫, 井上 亨
    2014 年23 巻6 号 p. 510-515
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/25
    ジャーナル オープンアクセス
     63歳, 男性. くも膜下出血にて当院に救急搬送され, 破裂遠位前大脳動脈瘤に対しコイル塞栓術を施行した. 術中に留置コイルが親血管内に軽度脱出し, 血栓症をきたしたため, オザグレルナトリウムとアスピリンを投与し血栓消退が得られたが, 治療5週間後に遅発性にコイル脱出の増悪を認め, 外科治療を要した. 術中・術後のコイル脱出は比較的まれであるが, ときに遠位塞栓や親血管閉塞をきたし, 広範囲脳梗塞や死亡につながる注意すべき合併症である. コイル脱出時の対処法と術中血栓症に対する抗血栓療法, コイル塞栓術後の直達手術について検討し, 文献的考察を加え報告する.
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