抄録
脳動脈瘤手術における電気生理学的モニタリングの役割について検討した. 対象はクリッピング術を施行した270例で, 適宜, MEP, 下肢SEP, VEPを施行した. MEPは前脈絡叢動脈, レンズ核線条体動脈, 中大脳動脈の血流不全, 下肢SEPは前大脳動脈の血流不全, VEPは後大脳動脈の血流不全のモニタリングに加えて視神経視交叉の血流不全および直接損傷のモニタリングとして使用した. 22例でMEPが消失し, 遮断の解除, clipのかけ直しにより20例で回復した. MEPが回復しなかった2例では片麻痺が後遺した. 前大脳動脈の一時遮断により下肢SEPの一過性の低下, 後大脳動脈の一時遮断時にVEPの一過性の低下を認めた. 脳動脈瘤手術においては, 各種モニタリングにより術中の虚血状態を感知し, 手術にfeedbackすることができる点が最も有用と思われた.