脳神経外科ジャーナル
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23 巻, 9 号
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特集 脳動脈瘤の最新知識―成因・病態から最先端治療まで―
  • 片岡 大治
    2014 年 23 巻 9 号 p. 702-709
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/25
    ジャーナル フリー
     UCAS Japan, SUAVe研究などの大規模研究により, 本邦の脳動脈瘤の自然歴が明らかになってきた. SUAVe研究は5mm未満の未破裂脳動脈瘤の観察研究であり, 年間破裂率は0.54%, 破裂の危険因子は若年, 4mm以上, 高血圧, 多発であった. UCAS Japanは, 6,697の未破裂脳動脈瘤を登録し, 治療もしくは破裂までの期間を観察した研究で, 年間破裂率は0.95%, 破裂の危険因子は大きさ, 部位, ブレブの存在であった. 欧米人を中心とするISUIAコホートと比較すると, 同じ大きさであっても本邦の未破裂脳動脈瘤の破裂率は欧米より高いこと, 部位に関しては欧米と同様IC-Pcomの破裂率が高いが, 本邦ではAcomの破裂率も高いことが明らかになった. 脳動脈瘤の発生要因に関しては, 動脈瘤壁の慢性炎症の重要性が示されてきた. 血管壁におけるhemodynamic stressによって, NF-κBの活性化などの内皮細胞の炎症が惹起され, マクロファージを主体とした炎症細胞が血管壁に集簇する. マクロファージがMMPなどを分泌することにより細胞外マトリックスの分解が亢進し, 動脈瘤壁の退行変性が進行するものと考えられている. スタチンはこれらの炎症カスケードを抑制し, ラット脳動脈瘤壁の退行変性を抑制することが証明されている. スタチンがヒト脳動脈瘤の増大や破裂を抑制する効果があるかどうかを実証するため, 現在SUAVe-PEGASUS研究が進行中である.
  • —血流の数値シミュレーションの現状と臨床応用への課題—
    大島 まり, 石上 雄太, 早川 基治
    2014 年 23 巻 9 号 p. 710-715
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/25
    ジャーナル フリー
     脳動脈瘤の発症, 成長, 破裂は, 血流によって引き起こされる力学的刺激が重要な役割を果たすことが指摘されている. 力学的刺激には, 圧刺激, 進展刺激, ずり刺激の3つが挙げられ, その中でも特に壁面せん断応力は内皮細胞に影響を与え, 脳動脈瘤を考える際に重要な力学的刺激といわれている. 本研究は, これらの力学的刺激を定量的に捉えるために, 医用画像や計測データから得られる患者の血管形状に対して数値解析を適用し, 患者個別の血行動態の情報を得るとともに予防や診断を生かすことのできる支援システムの構築を目指している. 本論文では, 血液の流体力学 (血行力学) や患者個別のシミュレーションの概説とともに, より生体に近い現象を再現するための末梢血管や血管壁の弾性の影響を考慮したマルチスケール血流—血管壁の数値解析について紹介する.
  • —電気生理学的モニタリングの役割について—
    佐々木 達也, 昆 博之, 斉藤 敦志, 中村 太源, 阿部 誠, 西嶌 美知春
    2014 年 23 巻 9 号 p. 716-720
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/25
    ジャーナル フリー
     脳動脈瘤手術における電気生理学的モニタリングの役割について検討した. 対象はクリッピング術を施行した270例で, 適宜, MEP, 下肢SEP, VEPを施行した. MEPは前脈絡叢動脈, レンズ核線条体動脈, 中大脳動脈の血流不全, 下肢SEPは前大脳動脈の血流不全, VEPは後大脳動脈の血流不全のモニタリングに加えて視神経視交叉の血流不全および直接損傷のモニタリングとして使用した. 22例でMEPが消失し, 遮断の解除, clipのかけ直しにより20例で回復した. MEPが回復しなかった2例では片麻痺が後遺した. 前大脳動脈の一時遮断により下肢SEPの一過性の低下, 後大脳動脈の一時遮断時にVEPの一過性の低下を認めた. 脳動脈瘤手術においては, 各種モニタリングにより術中の虚血状態を感知し, 手術にfeedbackすることができる点が最も有用と思われた.
  • 清水 宏明, 遠藤 英徳, 井上 敬, 藤村 幹, 松本 康史, 冨永 悌二
    2014 年 23 巻 9 号 p. 721-728
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/25
    ジャーナル フリー
     内頚動脈のチマメ様動脈瘤や動脈解離 (A群) あるいは大型瘤 (B群) の手術ではclippingと親動脈閉塞手術の選択が問題になり得る. われわれはA群では再破裂回避が重要と考え, 急性期にバイパス術を併用して頭蓋内trappingを行っている. B群では動脈瘤の状況に応じて, clipping, trapping, blind-alley formation, flow alterationのいずれかに適宜バイパス術を併用している. 成績は比較的良好であったが, バイパス閉塞, 穿通枝障害, コイル塞栓部での血栓形成などの合併症も経験した. バイパス術選択と確実な実施, 親動脈閉塞の方法, 抗血栓剤の選択などが留意点と考える.
  • —ステント支援コイル塞栓術の普及を踏まえて—
    中原 一郎, 太田 剛史, 松本 省二, 石橋 良太, 五味 正憲, 坂 真人, 岡田 卓也, 宮田 悠, 西 秀久, 園田 和隆, 高下 ...
    2014 年 23 巻 9 号 p. 729-740
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/25
    ジャーナル フリー
     脳動脈瘤における脳血管内治療の進歩は著しく, なかでも脳動脈瘤治療支援ステントの導入により従来治療困難であった脳動脈瘤が治療可能となっている. 一方, 直達手術によるネッククリッピング術は確立された治療でありgold standardといえる. 治療手段の選択にあたってはいずれの治療がより安全, 確実かつ根治的であるかについてさまざまな要因が勘案される. 特に治療困難例においては患者の全身的なprofileと個々の脳動脈瘤の解剖学的なprofileをもとに治療の適応, 手技選択を行う. 本稿では解剖学的profileとして, 動脈瘤に対するaccessibility, ネック処理と母血管血流温存, 穿通枝温存とperforator end, 大・巨大瘤における根治性と血栓化瘤の対処, 圧排による症候を取り上げ, 治療困難な脳動脈瘤の治療選択について, 直達手術および脳血管内手術を適応する立場から考察するとともに現時点での問題点および今後の展望について概説する.
温故創新
症例報告
  • 岩崎 真樹, 神 一敬, 加藤 量広, 大沢 伸一郎, 下田 由輝, 中里 信和, 冨永 悌二
    2014 年 23 巻 9 号 p. 744-749
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/25
    ジャーナル フリー
     両側頭蓋内電極留置によって術前精査と逆側の発作起始を捉えた側頭葉てんかんの1例を経験した. 症例は35歳右利き男性. 20歳のときに難治の複雑部分発作を発症した. 頭部MRIとFDG-PETは正常. 発作間欠時に両側側頭部のてんかん棘波を, 発作時に右側頭部に始まる脳波異常を認めた. 両側海馬と側頭葉に頭蓋内電極を留置して記録したところ, 左海馬に始まり対側海馬に伝播する発作が確認された. 左側頭葉前半部切除術を行い, 術後12カ月にわたり発作は完全消失している. 病理学的に皮質形成異常と海馬硬化が認められた. 側方診断に疑問がある側頭葉てんかんは, 両側電極留置によって発作起始を確認することが重要である.
  • 安河内 秀興, 木下 良正, 原田 篤邦, 津留 英智, 山﨑 富浩, 古野 貴, 秋葉 純, 矢野 博久
    2014 年 23 巻 9 号 p. 751-756
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/25
    ジャーナル フリー
     90歳, 女性. 頭部打撲のため当科受診した. 頭部CTでは右前頭葉に浮腫を認め, その部の頭蓋骨内板が破壊されていた. 造影MRIではdural tail signを伴った不規則に造影される腫瘤を認めた. 神経脱落症状はなかったが, 悪性髄膜腫や転移性硬膜腫瘍などと鑑別のため開頭腫瘍摘出術を施行した. 骨片の内面と硬膜の表面にもろいチーズ様の腫瘤が付着し, 硬膜と連続して弾性硬の脳実質外の腫瘍を一塊として摘出した. 病理組織検査では, 乾酪性壊死を伴う類上皮肉芽腫の診断で, Ziehl-Neelsen染色, PAS染色, Grocott染色で明らかな菌塊は認めなかったが, QuantiFERON-TB検査で結核の活動性を示していたため硬膜結核腫と診断した. 硬膜結核腫は非常にまれであり文献的考察を加えて報告する.
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