2015 年 24 巻 4 号 p. 232-238
脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血 (SAH) は依然, 予後不良である. 脳血管攣縮は介入可能な予後不良因子として最重要視され, 過去50年以上にわたり研究および治療のターゲットであった. しかし, 遅発性脳梗塞の発生率はいまだに約20%と高く, 解決したとは言い難い. 一方, 最近の臨床研究で脳血管攣縮の克服だけではSAHの予後改善に限界があることは明らかである. 即ち, 脳血管攣縮とは別に脳側の要因が重要視されるようになり, 早期脳損傷という新たな病態が提唱されたり, 大脳皮質拡延性抑制の関与が報告されるなど, SAH後の遅発性脳虚血の病態に関する新たな展開がみられる. ここでは遅発性脳虚血に関する最近の知見と課題を述べる.