脳神経外科ジャーナル
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特集 機能的脳神経外科
慢性疼痛に対する標準的刺激治療
齋藤 洋一
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 25 巻 2 号 p. 143-148

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抄録
 脳脊髄刺激療法を中心に難治性慢性疼痛治療について解説する. 脳脊髄刺激療法には, 脳深部刺激療法 (DBS), 一次運動野電気刺激療法 (EMCS), 反復経頭蓋磁気刺激療法 (rTMS), 脊髄刺激療法 (SCS) がある. DBSに対して米国FDAは認可していない. 本邦では限られた施設において, 末梢性神経障害性疼痛などに有効性が報告されている. EMCSは日本で開発され, 世界に広まった治療法であるが, 有効性が50%程度であり, 侵襲的治療法であるため, 施行数が伸びていない. 最近は非侵襲であるrTMSに代わられつつある. rTMSによる一次運動野刺激療法は欧州ガイドラインではレベルAに推奨されている. 効果が一時的であるため, 継続治療をどのようにするかが問題であるが, 在宅でも施行できるrTMS機器の治験が日本で始まろうとしている. SCSは低侵襲治療で, 椎弓切除後症候群がよい適応であるが, 一般にSCSが効かないとされる脳卒中後疼痛でも40%の患者で30%の除痛効果が見込める. 今後, 機器の発達によっては, より浸透するであろう. 後根侵入帯破壊術 (DREZotomy) は, 引き抜き損傷後疼痛の周期性激痛に有効性が高い. 脳脊髄刺激療法のよい適応は, 比較的若年で, 持続痛, 末梢性の痛み, 運動感覚障害が軽微な症例であり, 引き抜き損傷後疼痛の周期性激痛はDREZotomyがよい適応となる.
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© 2016 日本脳神経外科コングレス

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