抄録
痙縮はさまざまな中枢疾患により生じ, 重度の痙縮においては運動麻痺に筋緊張や不随意運動が加わることにより随意的な運動が妨げられ, 患者の日常生活動作を低下させる. このような患者を対象としてバクロフェン髄腔内投与療法 (ITB) 療法が導入され, その有効性や安全性から痙縮に対する重要な治療法として位置づけられている.
本邦でも2006年に導入されて以来, すでに1,000例を超える手術が行われ, 認知度は広がったが, ITB療法に携わる脳神経外科医は限られており, 適応となる疾患も脊髄損傷・脳血管障害・頭部外傷・痙性対麻痺・脳性麻痺など幅広く, いまだ十分にこの治療の恩恵を受けていない患者がいると推察される. そこで自験例と過去の文献を合わせITB療法の適応疾患, 基本的手術手技, 治療効果と, 今後の課題について報告する.