抄録
63歳, 男性. 進行する両下肢しびれと右下肢不全麻痺による歩行障害を主訴に来院した. 脊髄MRIにてTh4-5に脊髄空洞症を認め, cine mode MRIを施行したところTh5-6レベルに膜様構造物を認め, 脊髄空洞症を合併した脊髄くも膜囊胞と診断した. 手術はTh5-6レベルの椎弓切除を行い, くも膜囊胞を大きく開放した. 術後MRIでは空洞は速やかに縮小しており, 運動麻痺は軽快した. 本症例ではcine mode MRIを用いることにより硬膜内の膜様物を同定できたため, 脊髄くも膜囊胞の診断に至った. 脊髄空洞症の原因として脊髄くも膜囊胞を鑑別診断として念頭に置き, cine mode MRIはその診断に有用であると考えられる.