脳神経外科ジャーナル
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特集 出血性脳血管障害
自然歴に基づいた未破裂脳動脈瘤の対応と課題
森田 明夫
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2016 年 26 巻 2 号 p. 84-91

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抄録

 日本では未破裂脳動脈瘤が多く発見される. そのほとんどは脳ドックやスクリーニングで偶然発見されるものであり, その対応には多くの課題がある. 基本的に脳動脈瘤の治療の選択は患者の年齢や健康状況, 脳動脈瘤の自然歴, また治療の危険性から判断される. 未破裂脳動脈瘤の自然歴は近年大規模な研究を統合し解析を行ったいくつかの予測モデルが提案されている. 個々の脳動脈瘤に関してある一定の信頼区間をもって破裂の危険性を予測し, 各施設の治療リスクを説明したうえで治療法を判断することができるようになりつつある. 世界の脳動瘤治療を判断している医師のコンセンサスから生まれた治療推奨スコアというものも提唱されている. しかし治療判断においては以上のようなファクターに加えて患者のリスクの捉え方・理解度, うつ症状なども選択においては重要な要素となり, リスクコミュニケーションのあり方が重要となる. 近年脳動脈瘤を保有する患者では, 元々多くの危険因子を有していることが多いこと, 長期経過では脳動脈瘤破裂よりも他の要因で死亡する患者が多いこと, また未治療, 治療を受けた患者も一般人よりも死亡率が高いことなどから, 患者本来の自然歴を重視すべきという見解も生まれてきている. また動脈瘤発生や破裂をきたす可変因子を発見し内科的に治療する試みも治験として進められようとしている. 一方で唯一超高齢社会を迎えている日本および今後高齢者が増える諸外国ではいかに高齢者の未破裂脳動脈瘤に対応するかがきわめて重要な課題となっている. 本稿では現在の脳動脈瘤治療適応の考え方, また課題についてまとめた.

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© 2016 日本脳神経外科コングレス

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