脳神経外科ジャーナル
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特集 出血性脳血管障害
脳動脈瘤治療における直達手術の役割
片岡 大治佐藤 徹髙橋 淳
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2016 年 26 巻 2 号 p. 92-103

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抄録

 脳動脈瘤に対する直達術もしくは血管内治療の治療選択は, 動脈瘤の部位や形状などから, それぞれの長所短所を考慮して, 症例ごとに決定する必要がある. クリッピング術には, 血管壁および分枝の性状を直視下におさめて適切な状態に血管を形成することができるという利点があり, 特に複雑な形状の瘤, 穿通枝や分枝が動脈瘤から分岐する場合などでその長所を生かすことができる. そのためには, 病変周囲の解剖の可視化, 動脈瘤の可動性をもたせるための全周性剝離, さまざまな角度からの操作を可能にする広い術野の確保が必要である. 一方, 直達術では血管内の血流を直接観察することができないため, ドップラー, ICG蛍光造影, 電気生理学的検査などの術中モニタリングが必須である. 頭蓋内ステントの進歩により, 大型瘤や広頚部瘤に対する血管内治療の適応は拡大しつつあるが, ネックで確実に血流を遮断できるクリッピング術は有力な治療選択肢の1つである. バイパスを併用して末梢への血行再建ができることが, 直達術のもう1つの利点である. バイパスは血管内治療との複合治療でも, 脳への侵襲を最小限にして, 複雑な動脈瘤を根治させる有効な治療法となり得る. 直達手術の特性をよく理解し, その利点を最大限に生かすような治療を行うことにより, 脳動脈瘤治療全体の成績向上につなげることができる.

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© 2016 日本脳神経外科コングレス

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