2016 年 26 巻 3 号 p. 178-184
One Week Study 2012 (日本頭部外傷データバンク) によると, 軽症・中等症頭部外傷は入院を要する頭部外傷の86%を占め, 頻繁に遭遇する病態である. 中等症頭部外傷においては15%, 軽症頭部外傷においては7.6%の割合で重症化し, 外科的治療が必要となっており, 軽視せずに慎重な判断や対応が重要である. 入院後は, 重症化の危険因子を踏まえたうえで, 積極的な経過観察が重要となる. 頭蓋内病変の有無や重症化の予測ツールとしてS-100B proteinやD-dimerなどの血液biomarkerが注目を浴びており, 自験例も含めて紹介する. 軽症・中等症頭部外傷においては, “重症化” への対応と同様に, 高次脳機能障害や脳震盪後症候群などの社会的問題への対応も重要である. 今後, 脳神経外科医が真摯に取り組むべき分野である.