2019 年 28 巻 8 号 p. 480-490
【目的】血管芽腫の手術適応と手術戦略を総括する. 【方法】対象は, 1996~2017年に手術を施行した血管芽腫連続79例である. 延髄11例, 内リンパ囊5例, 脊髄13例, 小脳50例であった. Von Hippel Lindau (VHL) 病患者は, 24例 (31%) であった. 2010年より術前三次元融合画像 (3DCG) による血管芽腫のフィーダー・ドレーナーの “血管解剖の可視化” を併用した. 【治療適応】 (1) 脊髄腫瘍では1cm以上, または増大傾向があるものは無症状でも手術が推奨される. (2) 小脳の無症候性腫瘍は症候性になってから手術を行うことを原則とするが, 1) 直径が2cm以上, 2) 画像上腫瘍または囊胞の急速な拡大をみたものは無症候性であっても手術による摘出が推奨される. (3) 脳幹部腫瘍は, 症候性または1cm以上の無症候性のもので, かつ脳幹表面に位置するものは早期手術による摘出術を考慮する. (VHL病診療ガイドライン2017). 【手術戦略】 (1) 3DCGは, 血管芽腫特有の穿通枝タイプのフィーダー・ドレーナーが, どこに, どれだけの数, どのように走行するかの把握に有効である. (2) 3DCGは, 病変と錐体路, 脊髄視床路, 脊髄小脳路との近接性の術前把握に有効である. 実際の手術シミュレーションと術中写真を提示し, 適応, 手術戦略につき総括する.