2020 年 29 巻 12 号 p. 830-836
脳動脈瘤の病態の本質は, 血管壁の菲薄化と脆弱化を伴う退行性変化であり, マクロファージを主体とする慢性炎症と血行力学的負荷はその主要なmodulatorである. Vessel wall imagingは, 瘤壁の性状の評価に有用な診断法として期待される. 脳動脈瘤クリッピング術は, 正常な血管壁を再構築する治療であるが, 壁の性状によっては不可能なこともある. その場合, バイパス術を併用した母血管閉塞が選択されることがあるが, 動脈瘤近傍の穿通枝の血栓性閉塞や, 不十分な血栓化などの問題点が残されている. 瘤内の血栓化が進行し, 完全に器質化すれば治癒につながるが, 不完全な血栓化は, かえって動脈瘤の増大や壁の退行性変化を促進する因子として働く.