2020 年 29 巻 8 号 p. 536-542
良性脳腫瘍である頭蓋咽頭腫, 髄膜腫, 神経鞘腫について, ゲノム診断とゲノム医療への応用の可能性について現状を解説した. 乳頭頭蓋咽頭腫型ではBRAF遺伝子のV600E変異が認められ, MAPKシグナル伝達系が特異的に活性化していることが明らかにされ, MAPK経路の阻害薬を用いた分子標的療法による臨床試験が欧米で進行中である. 孤発性髄膜腫に関しては, TRAF7, KLF4, AKT1, SMOなどの新たな変異が報告された. 孤発性神経鞘腫に関しては, 新たにSH3PXD2AとHTRA1の癒合遺伝子が約10%の症例でみつかり, MEK阻害薬を用いた分子標的療法の可能性が示唆されている.