脳内出皿を合併した両側内頸動脈形成不全症の1例を報告した.症例は38歳の男性で,意識障害で来院した.頭部CTにて右前頭頭頂葉に直径約6 cmの脳内出皿を認め,脳血管造影と頭蓋底CTにより診断した.両側内頸動脈形成不全の報告は比較的稀で,われわれが検索しえたかきりでは自験例を含めて25例であった.症状は,くも膜下出血9例,脳虚血症状7例など,脳循環障害が18例(72%)を占めていた.本症例における脳内出皿の発症機序は,頭蓋内血行動態の異常と血行力学的ストレスの関与が示唆され,側副血行路が破綻した可能性が最も強く考えられた.また,今後の管理と治療に際しては,その病態の十分な把握と評価が必要であると思われた.