2021 年 30 巻 11 号 p. 804-810
慢性骨髄性白血病の治療に使用されるチロシンキナーゼ阻害剤 (tyrosine kinase inhibitor : TKI) の有害事象の1つとして末梢動脈閉塞性疾患がある. 第二世代TKIであるニロチニブの長期服用下に多発動脈狭窄をきたした1例を経験したので報告する. 31歳時に慢性骨髄性白血病と診断され, 37歳時より15年以上にわたりTKI (ニロチニブ5.5年間) が継続されてきた. 脳血管撮影で胸部・頚部血管に多発性の狭窄病変を認めた. TKIは中止し, 左椎骨動脈起始部の高度狭窄に対し経皮的バルーン拡張術を施行した. 診療にあたり, ニロチニブによる多発動脈狭窄の可能性があることを知っておく必要がある.