2023 年 32 巻 12 号 p. 835-840
頭頚部外傷に伴う椎骨動脈損傷, 特に銃創や刺傷などの鋭的椎骨動脈損傷は全外傷の1%未満とまれな疾患で, 大量出血や気道狭窄など重篤な経緯をたどることが多い. 今回, 繰り返す虚血性脳卒中の精査で外傷性椎骨動脈仮性動脈瘤が判明した症例を報告する. 10年前に左頚部, 胸部にナイフでの刺傷歴のある30歳男性. ふらつき, 不穏を主訴に救急外来を受診した. 頭部MRIで後方循環支配領域に時相の混在する多発性脳梗塞を認めた. CTAで刺創痕に一致した高位の左椎骨動脈に58mmの部分血栓化仮性動脈瘤を認めた. 対側椎骨動脈が発達しており, 母血管閉塞術 (PAO) を行う方針とした. 比較的長いsegmentをできるだけ密に塞栓するため, 脳動脈瘤用のコイルのみならず, 血管塞栓用デバイスも使用した. その後脳梗塞の再発を認めず良好な転帰を得た.