2024 年 33 巻 4 号 p. 283-288
キアリ奇形1型と脊髄係留症候群が合併することは知られているが, それらの症候化の様式やタイミングについては不明な点が多い. 今回, キアリ奇形1型の術後1年で脊髄係留症候群を発症した症例を報告する. 症例は12歳女性で, 症候性のキアリ奇形1型に対して大孔減圧術を施行された1年後に前屈で誘発される腰痛, 下肢痛, 膀胱直腸障害をきたし再診した. 神経症状とMRI所見から潜在性脊髄係留症候群と診断し, 終糸切断術を行い症状は改善した. 本症例では後頭蓋窩容積, 終糸の緊張, 成長期の脊椎の成長の3要素が程度, タイミングの面から相互作用したことで, キアリ奇形1型と脊髄係留症候群が経時的に症候化したと推察された.