抄録
阪神・淡路大震災により兵庫県内脳神経外科施設は,激震地区で全壊した1施設を含め多大な被害を受け,通常の診療に復するのに約1カ月を要した.震災に強い病院建造物設計,診断機器の設置方法を検討する必要がある.一方,周辺地区脳神経外科施設の被害は軽微であり,1,2月入院数の増加は激震地区の機能を代償しているものと考えられた.災害により被災した地区からいかにして周辺地区医療施設へ迅速に患者を搬送するかについて対策をたてておくこと,平常時からの病院問の連絡と協力関係,災害に強い通信手段を確立しておくことが重要である.震災による直接の神経外傷数は少なかったが,その後の神経外傷は増加しており,交通外傷,復旧作業など,震災による二次的要因の関与が重要と考えられた.また,震災が活動時間帯に発生しておれば,交通事故の多発から神経外傷の発生数は今回のものと大きく異なるものとなることに十分留意しておく必要がある.神経外傷の中で震災後,慢性硬膜下血腫の頻度が著しく高いことが確認された.震災後の劣悪な生活状況にもかかわらず脳血管障害の発生頻度に明らかな変化はみられなかった.