脳神経外科ジャーナル
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成長ホルモンと IGF-Iに関する最近の知見(<特集>下垂体)
對馬 敏夫
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1997 年 6 巻 3 号 p. 147-154

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抄録
成長ホルモン(GH)は正常な発育,成熟に不可欠である.GHの合成や分泌は,視床下部のソマトスタチン(SS)とGH放出ホルモン(GHRH)により制御されている.これらのホルモンやその受容体のDNAがクローニングされ,その発現調節機構が研究されている.GHRH,SS受容体は,いずれもG蛋白と会合し,アデニールサイクラーゼを介して,GH合成分泌を調節する.このほかに,強力なGH分泌刺激作用をもつ一群のペプチド(GHRP)が開発されている.その作用は,プロテインキナーゼC(PKC)を介するようにみえる.最近,GHRPの受容体が同定され,これは内因性GHRPの発見を刺激するであろう.GHRPはあるタイプのGH欠損症の治療に有用であろう.また・GH合成やGH産生細胞の分化には,転写因子であるpit-1が必要なことも明らかにされている.GHは糖,脂質,蛋白,電解質代謝に広範な影響をもつ.これらの作用は受容体に会合するJAK2というテロシンキナーゼを介して発現するが,PKCを介する系もある.GHの成長促進作用は,主としてインスリン様成長因子(IGF-1)を介する.IGF-Iは各種諸細胞の増殖や分化を促進する.また,IGF-Iやその受容体は,腫瘍発育にも関与する.IGF-IIは非膵腫瘍に伴う低血糖の原因と推定されている.血中のIGF-I,IIの大部分は,IGF結合蛋白(IGFBP)と結合して存在する.6種類のIGFBPが同定されているが,その生理的意義は不明な点が多い.
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© 1997 日本脳神経外科コングレス

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