抄録
Epstein-Barr virus(EBV)に起因する小脳脳幹部脳炎の1例を経験した.症例は特発性血小板減少性紫斑病にて長期のステロイド療法を施行されていた25歳の女性で, 伝染性単核救症に羅患後, 脳炎を併発したと考えられた.血清のウイルス抗体価はEB-VCA-1gGが320倍, EB-EBNAが80倍で, CT, MRIにて小脳脳幹部に病変を認めた.定位的脳生検術にて小脳半球より組織を採取し, polymerase chain reaction(PCR)法にてEBVのDNAの存在を確認し得た.本症例を含め, 25例のEBV脳炎について検討した結果, EBV感染症, 免疫不全症を基礎疾患にもつ若年者に好発し, 神経症候および画像診断により, 小脳脳幹部に病変が存在するものが多かった.確定診断には従来は血清, 髄液のウイルス抗体価によるものが中心であったが, 近年は髄液中の細胞, 脳生検組織のPCR法による検討が有用であると考えられた.