抄録
くも膜下出血後の症候性脳血管攣縮に対するintraarterialinfusion of papaverine (IAP)の有効例, 無効例の病態を明らかにする目的で, IAP前後の脳循環動態を検討した.dynamic-DSAから得られた時間-濃度曲線からmean transit (MTT)を算出し, IAP直後の臨床症状, 6ヶ月後のGOSの面から検討した.IAPの結果, すべての症例でMTTの短縮が得られた(p<0.001), しかし, MTTの短縮は必ずしもIAP直後の臨床症状の改善に結びつかなかった.臨床症状からみたIAP無効群はIAP前におけるMTTがIAP有効群に比較して有意に延長していた(p<0.05), すなわち, IAP前のMTTの延長が少なかった症例ほどIAPによる臨床症状の改善が認められた.IAP有効群ではIAP前のMTTが短かく, IAPは高度の脳循環障害に陥る前に施行されてこそ効果が得られると考えられた.