抄録
著者らは, 脳梗塞をきたした前大脳動脈(ACA)A2部の非外傷性解離性動脈瘤の1例を経験した.症例は, 高血圧症の既往を有する57歳男性で, 突然下肢に強い右片麻痺をきたした.入院時のCTでは異常はなく, 頸動脈撮影で左ACAのA2部に狭窄を認めたが, 解離腔は確認できなかった.保存的に加療したが, 発症4日目のMRIでは左ACA領域に梗塞が明らかとなり, 左ACA A2部の描出は不良であった.13日目に再度施行した頸動脈撮影の斜位像で, 存続する左ACA A2部の血管腔の狭窄と, この背外側に描出される解離腔とからなるdouble lumen signを認めた.右上下肢の機能は回復し, 抗血小板剤を投与して9カ月を経過した現在再発はみられていない.