脳神経外科ジャーナル
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脳動脈瘤を合併した悪性髄膜腫の1例 : 症例報告および文献的考察
藤田 敦史朝田 雅博齋藤 実中村 秀美中村 貢玉木 紀彦
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2000 年 9 巻 1 号 p. 35-43

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抄録

中大脳動脈瘤を伴った悪性髄膜腫の1例を経験した.現在までに報告されている脳動脈瘤合併髄膜腫55症例と, 自験の計56症例を検討し, その臨床的特徴を明らかにした.症例は51歳, 女性で, 意識障害, 右片麻痺を呈して当院に搬送された.術前神経放射線学的所見上, 左中頭蓋窩の巨大髄膜腫と同側中大脳動脈瘤が認められた.両病変は同一開頭にて一期的に腫瘍摘出と脳動脈瘤クリッピングを行った.腫瘍の組織診断は悪性髄膜腫であった.患者は術前から認められた左動眼神経麻痺以外に神経脱落症状を認めることなく独歩退院した.これまでに報告された脳動脈瘤を伴った髄膜腫の検討では, 平均年齢50.5歳, 男:女=16:40であった.合併病変を伴わない場合と比較して, 髄膜腫の発生部位では嗅窩部(17.9%)に多く認められ, 後頭蓋窩の発生頻度は低く, 脳動脈瘤の発生部位では内頸動脈(35.7%)の発生頻度が高かった.髄膜腫および脳動脈瘤は多発性(髄膜腫10.6%, 脳動脈瘤21.4%)であることが多かったが, 両者ともに多発性で認められることは稀であった.両者が単一の病変である時は同側に病変が存在することが多かった.組織はmeningotheliomatous meningiomaが32.3%を占め, 悪性髄膜腫は稀であった.髄膜腫摘出のみで未処置となった脳動脈瘤の破裂率は25.0%と高率であり, 術後死亡の大きな原因となっていた.可能であれば髄膜腫摘出術および脳動脈瘤根治術を一期的に行うべきであると考えた.

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© 2000 日本脳神経外科コングレス
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