2019 年 44 巻 1 号 p. 29-34
緒言:筆者らは,肩関節拘縮に対してcircumductionとCodman's paradoxの原理を応用した分回し運動による肩関節の可動域練習(以下分回し回旋運動)を行っている.今回,この分回し回旋運動の効果について検討した.
方法:誘因なく発症した肩関節拘縮の患者を対象とし,これらを分回し回旋運動を行った153例165肩(以下分回し回旋群)と従来の上腕骨の長軸に沿った回旋運動を行った106例116肩(以下上腕骨軸回旋群)の2群に分けた.運動療法開始から3カ月後の肩関節の上肢下垂位での外旋可動域,屈曲と外転の可動域,および指椎間距離(背中に回した手の母指尖と第7頚椎棘突起との距離)の改善度を2群間で比較検討した.
結果:上肢下垂位での外旋可動域,屈曲と外転の可動域,および指椎間距離のすべての項目で,分回し回旋群の改善度が上腕骨軸回旋群のそれに比べて有意に大きかった.
考察:肩関節拘縮の患者に対してセラピストが分回し回旋運動を他動的に行うことで,肩関節可動域を効果的に改善することができる.
結論:分回し回旋運動は,肩関節拘縮に対する運動療法として有用である.