2019 年 33 巻 1 号 p. 21-30
本研究はパフォーマンスに対するアスリートの内的視点を現象学を基礎としたイディオグラフィックアンケートを用いて解釈し,その視点をパフォーマンスアナライシスに統合する.従来,パフォーマンスアナライシスを専門とする研究者の役割は,パフォーマンスに関する特異的な知識を明らかにする事,そして明らかにされた知識を現場のコーチへトランスファーする事であった.前者において,研究者達は多くのエリートアスリートのパフォーマンスに焦点を当て,ハイパフォーマンスを可能とする因子を特定してきた.また後者に対し,研究者達は科学誌における情報公開の場を通じた知識のトランスファーを実践してきた.しかし現在ではパフォーマンスアナライシスの普及に伴い,研究者達はエリートアスリートやコーチを対象としたパーソナルサポートへのアプローチ方法を模索している.パーソナルという焦点からパフォーマンスアナライシスを実践する上で,研究者達はそこに一般的視点や知識を用いるのではなく,それぞれのアスリートの個人的で内的な分析視点をパフォーマンスアナライシスへ統合する必要がある.しかし一方で,研究者がアスリートの内的分析視点へのアクセスする方法論は先行研究より明らかにされていない.本研究は現象学を基礎としたイディオグラフィックアプローチを用いた研究手法からその方法論を明らかにする.また上記方法論より,オリンピックや世界室内陸上競技選手権でメダル獲得経験のある一人のエリートハイジャンパーの内的分析視点をエクスプロアーする.