2013 年 10 巻 2 号 p. 133-150
本研究は,複雑かつ生物的な運動ほど注視され,刺激への好意度を上昇させるかを検討した.実験1Aは対象の運動の方向変化回数(1回,3回,7回)と変化タイミング(一定,ランダム),実験1Bでは実験1Aの要因に対象の加速度(加速,減速,加減速混合)を加えて,実験2(実験2Aは実験1と同様の自由観察であり,実験2Bは注視点を注視させた統制実験であった)ではアイトラッカーを用いて実際に参加者の眼球運動を観察し,それらが参加者の刺激評価に及ぼす影響を調べた.参加者には,運動する黒縁の円を8秒間呈示したあと,円の動きについて6尺度(面白さ,好意度,複雑性,生物性,関心度,印象度)を7段階で評定するよう求めた.実験の結果,物体運動の複雑性・生物性が能動的な注視を喚起させ,刺激への評価を上昇させた.また,刺激への視覚探査が見られ,対象物体の加速度により追い方や視線停滞数の違いが見られた.