認知心理学研究
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原著
部分遮蔽刺激を用いたアモーダル補完時の単純接触効果の検討
富田 瑛智松下 戦具森川 和則
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2013 年 10 巻 2 号 p. 151-163

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抄録

単純接触効果とは,繰り返し刺激に接触することでその刺激の評定値がポジティブに変化することである.先行研究では,高次認知処理過程の介入を想定したとき,単純接触効果は脳内で生成されたイメージの形状と一致する刺激に対しても生じることが示されつつある(Craver-Lemley & Bornstein,2006; Yagi et al.,2009).しかし,高次認知機能の介入を想定しないとき,接触時に視覚的に入力された刺激の形状と脳内で生成されたイメージの形状のどちらに単純接触効果が強く現れるのか明らかではない.本研究では,アモーダル補完事態において,刺激の視覚的に入力された際の刺激形状と脳内で生成されたイメージ形状のどちらに強く単純接触効果が生じるのか検討した.アモーダル補完事態では視覚入力時の形状は断片的であるのに対して,脳内で生成されたイメージの形状は補完されて完全な形になる.実験では部分的に遮蔽された刺激と接触したあと,接触刺激と同一形状の刺激(アモーダル補完前の形状)と,アモーダル補完された後の刺激(アモーダル補完後の形状)のどちらに単純接触効果が強く現れるのか検討した.実験の結果,単純接触効果は接触した刺激と同一形状の刺激(アモーダル補完前の形状)に強く現れた.そのため,アモーダル補完事態では,脳内で生成されたイメージの形状よりも接触時に視覚的に入力された形状と一致する刺激に単純接触効果が強く現れることが示された.

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© 2013 日本認知心理学会
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