抄録
非効率的な視覚探索課題において,半数のディストラクタ(先行刺激)が残り半数とターゲット(追加刺激)に先行して提示されると,それらは探索に影響しなくなる.この現象は視覚的印付けと呼ばれている.最近の研究で,視覚的印付けが生起する事態でもターゲットが先行ディストラクタと同じ特徴(e.g.,色)を持つ場合にはターゲットの探索が遅延することが報告された(特徴一致効果).本研究では,特徴一致効果が先行刺激からターゲットへの抑制の持ち越しによって起こるのか,追加ディストラクタへの注意の捕捉による視覚的印付けの不全によるのかについて検討した.実験の結果,追加ディストラクタが注意を捕捉する場合には印付けの効果が弱まった.しかし,実験参加者が追加ディストラクタ色を無視する構えを形成した場合には視覚的印付けは完全に生起した.これらの結果から先行提示探索において妨害項目に注意が捕捉されることで視覚的印付けが不全になることが明らかとなった.