抄録
本研究では,総学習時間が等しい場合に,刺激項目を複数回に分けて反復的に提示する条件と,1回にまとめて継続的に提示する条件を設け,それらの操作がDRM手続きを用いた虚偽記憶に及ぼす影響について検討した.反復提示条件では,それぞれの刺激項目が5回提示され,それらの提示時間は400 msであった.継続提示条件では,それぞれの刺激項目が1回提示され,それらの提示時間は2,000 msであった.そうすることによって,両提示条件の総学習時間は2,000 msで統制されていた.再認フェイズでは,実験参加者の半数は750 ms以内でテスト項目に反応するように教示されたため,適切なモニタリングを行うことができなかった.残りの半数は自分のペースで反応するように教示され,加えてRemember/Know判断を行った.結果として,以下の知見がもたらされた.(a)反復提示条件は虚再認がもっとも多くなった,(b)継続提示条件では虚再認は多くならなかった,(c)反復提示条件は継続提示条件よりも虚再認が多くなった,(d)制限時間なし条件と制限時間あり条件との間では虚再認は差がなかった,(e)反復提示条件は虚再認のRemember判断も多くなった.これらの知見は,活性化−モニタリング理論よりもむしろファジィトレイス理論を支持していた.