抄録
多属性意思決定における魅力効果と妥協効果は,合理的選択公理に違反している.二つの文脈効果の基本メカニズムについて検討するため,実験参加者の眼球運動を測定し,情報探索と情報獲得のパターンを分析した.20名の大学生を二つの文脈効果条件にランダムに割り当てた.実験参加者は,2属性について記述された3選択肢からなる12個の仮想の購買課題を行った.2条件の選択率に関して,有意な文脈効果を確認できた.2条件において,選ばれた選択肢に対する眼球運動停留時間は有意に長く,選ばれた選択肢に対する内部サッカード頻度は有意に高かった.2条件において,選ばれた選択肢を含んだ2肢間サッカード頻度は,有意に高かった.さらに,サッカードに関する時系列解析の結果,選ばれた選択肢を含む2肢間サッカードは増加するが,選ばれた選択肢を含まない2肢間サッカードは減少することが明らかとなった.こうした結果は,意思決定において文脈効果が生じる基本メカニズムを解明するため,眼球運動測定が必要不可欠であることを示唆している.