認知心理学研究
Online ISSN : 2185-0321
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原著
断片的な場面情報の時間的保持特性
小澤 良大杉 尚之牧野 義隆
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2015 年 12 巻 2 号 p. 77-87

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抄録

短時間のうちに連続して取得された部分的な視覚情報は,取得直後には正確に想起可能であるが,その多くが数s後には想起不可能になる.このことは,時間の関数に従って場面に関する記憶表象が急速に失われることを示唆する.しかし,これまでの研究では短時間で連続的に視覚情報が獲得される事態を模擬するために,独立した個別の場面または個々のオブジェクトの画像が同じ試行内で連続して提示されていた.そのため個々の刺激が互いに一致した場面より取られた場合,それが衰退に及ぼす影響が不明である.そこで本研究では同一の場面画像を分割した画像を連続的に提示することで,場面の一致性が場面情報の保持に及ぼす影響について検討した.さらに信号検出理論を用いることで,提示された画像か否かを識別する感度と判断基準の観点から評価した.実験の結果,場面の一致性は時間にかかわらず感度を低下させた.また,場面の一致性の有無によって時間の関数に従った判断基準の変化の傾向が異なっていた.このことから場面の一致性は再認系列以前に記憶表象を衰退させること,また想起時の意思決定段階で影響することが示唆された.

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© 2015 日本認知心理学会
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