認知心理学研究
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系列学習によって形成された表象に記憶の固定化がもたらす変化
渡辺 晃分部 利紘綿村 英一郎高野 陽太郎
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2015 年 13 巻 1 号 p. 23-30

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抄録
系列学習に関する研究により,学習後に睡眠を経ることで,先行チャンク内項目の検索と並行した後続チャンク内項目の検索が促進されるという,“記憶の固定化”が示されてきた.しかし,学習した系列の記憶表象に睡眠がいかなる変化をもたらすのかについては未解明であった.われわれは,学習後の睡眠がチャンク間の結合を強化するのか,それとも,個々の項目間の結合を強化するのか検証した.参加者は二つのチャンクにより構成された系列を学習した後,その系列の中間部分,すなわち先行チャンクの後半から後続チャンクの前半にかけての部分系列を,それ単体もしくは系列全体の一部として実行した.結果,同部分系列に対する運動速度が睡眠により向上したのは,それを系列全体のなかに埋め込む形で実行した場合にのみ限られた.これは,睡眠が強化するのは項目同士ではなくチャンク同士の結合であること,およびチャンクの構造は記憶の固定化後も保持されていることを示唆する.
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© 2015 日本認知心理学会
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