認知心理学研究
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原著
不適切なスキーマの活性頻度とタイムプレッシャーが認知スリップに与える影響
重森 雅嘉
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2019 年 17 巻 1 号 p. 37-47

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抄録

認知スリップは知覚,思考,行為のそれぞれの情報処理段階において生じる.そして,私たちは,これに同じような原因,例えば,思い込み(不適切なスキーマの活性化)や適切なスキーマへの注意欠陥を想定することが多い.3つの実験で,不適切なスキーマの活性頻度とタイムプレッシャーが異なった情報処理段階の認知スリップに与える影響をテストした.実験では認知スリップを誘発する課題が用いられた:見間違いを誘発する数字書き写し課題(実験1),思考の固着を誘発する水がめ課題(実験2)および書き間違いを誘発する反復書字課題(実験3)であった.これらのすべての実験では,参加者の半分は不適切なスキーマを活性化する先行試行を行い,残りの半分は特別なスキーマを活性化させないような試行を行った.また,参加者の半分はタイムプレッシャー下で試行を行い,残りの半分はタイムプレッシャーなしに試行を行った.結果は,どの実験においても不適切なスキーマの活性頻度が高く,かつタイムプレッシャーのある条件においてのみ,認知スリップの発生率が高かった.これらの結果からさまざまな情報処理段階における認知スリップのメカニズムについて議論した.

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© 2019 日本認知心理学会
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