2020 年 17 巻 2 号 p. 91-99
思い出そうとする意図がないにもかかわらずふと想起される自伝的記憶は不随意記憶と呼ばれている.本研究では,言語連想課題における連想の流暢さと不随意記憶の生起との関係について検討した.研究1では,197名の大学生が連想課題中に生起した不随意記憶を報告した.また,彼らは,連想語の検索が自動的であったかどうかについて評定した.その結果,連想語が自然に思い浮かんだ場合に不随意記憶が生じやすかった.研究2では,26名の大学生が大学構内を実験者とともに散歩する間に生起した不随意記憶を報告する統制されたフィールドインタビューに参加した.さらに,参加者は,実験室で言語連想課題にも取り組んだ.統制されたフィールドインタビューで収集された不随意記憶数と実験室内の連想課題において産出された連想語数との間には有意な正の相関が認められた(r=.53).これらの結果は,不随意記憶が記憶ネットワークにおける連想を基礎としており,言語連想と共通したメカニズムをもっていることを示唆している.