認知心理学研究
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原著
学習教材における処理流暢性が学習者の学習プロセスに及ぼす影響
長谷部 育恵楠見 孝
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2020 年 18 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

本研究では,学習教材における処理流暢性が学習者の認知・行動に及ぼす影響を検討した.大学生(N = 68)が実験に参加し,流暢フォントを用いた学習課題と非流暢フォントを用いた学習教材に対して同時進行で取り組んだ.本研究では,流暢性が学習時のモニタリング(JOL)とコントロール(学習時間の割り当て)に及ぼす影響を見るため,参加者に対しては学習後に実施する両課題に関するテストで,それぞれ同程度の学習成績を残せるように学習を進めるよう求めた.その結果,参加者内で比較すると,流暢フォント課題に取り組んだときと比較して非流暢フォント課題に取り組んだときにはJOLの評定値は低く,かつ自由学習時間中により多くの時間が割り当てられていた.ただし,その際学習時間と学習成績との間に相関関係はみられなかった.補足的な分析からは,学習方略や課題に対する内発的動機づけや課題に対する努力などによって,学習時のコントロールやパフォーマンスに個人差が生じる可能性が示唆された.

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© 2020 日本認知心理学会
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