認知心理学研究
Online ISSN : 2185-0321
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18 巻, 1 号
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原著
  • 長谷部 育恵, 楠見 孝
    2020 年 18 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/24
    ジャーナル フリー

    本研究では,学習教材における処理流暢性が学習者の認知・行動に及ぼす影響を検討した.大学生(N = 68)が実験に参加し,流暢フォントを用いた学習課題と非流暢フォントを用いた学習教材に対して同時進行で取り組んだ.本研究では,流暢性が学習時のモニタリング(JOL)とコントロール(学習時間の割り当て)に及ぼす影響を見るため,参加者に対しては学習後に実施する両課題に関するテストで,それぞれ同程度の学習成績を残せるように学習を進めるよう求めた.その結果,参加者内で比較すると,流暢フォント課題に取り組んだときと比較して非流暢フォント課題に取り組んだときにはJOLの評定値は低く,かつ自由学習時間中により多くの時間が割り当てられていた.ただし,その際学習時間と学習成績との間に相関関係はみられなかった.補足的な分析からは,学習方略や課題に対する内発的動機づけや課題に対する努力などによって,学習時のコントロールやパフォーマンスに個人差が生じる可能性が示唆された.

  • 太田 直斗, 相澤 裕紀, 厳島 行雄
    2020 年 18 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/24
    ジャーナル フリー

    Rosch et al.(1976)をはじめとするオブジェクト認知に関する先行研究では,上位カテゴリー(文具),基本カテゴリー(ペン),下位カテゴリー(赤ペン)というカテゴリーの階層構造において,基本カテゴリーが最初に認識されることが主張されてきた.しかし,そのような先行研究では,「機能」という上位概念がどのように認識されるのかという問題は検討されてこなかった.本研究では,機能カテゴリー(切る)が,オブジェクトの認識システムにおいてどのような役割を担うのかについて,概念へのアクセスの速さに着目して検討を行った.実験1, 2では機能カテゴリーによるオブジェクトの認識が上位カテゴリーよりも速く行われることを明らかにした.RSVPによる検出課題を行った実験3では,機能カテゴリーと基本カテゴリーの検出成績(d’)の差は有意ではなかったが,機能カテゴリーは上位カテゴリーよりも検出成績が優れることが明らかとなった.これらの結果は,機能カテゴリーはオブジェクトの認識の初期段階で認識可能であり,人工オブジェクトを認識するうえで重要な役割を担う概念であるということを示唆している.

  • 川﨑 采香, 上原 泉
    2020 年 18 巻 1 号 p. 25-40
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/24
    ジャーナル フリー

    自伝的記憶とは自分史の一部をなすような,過去の個人的な出来事の記憶であり,そのあり方や語られ方に文化差や性差,発達差がみられる可能性が指摘されているが,日本人の思春期を対象とした研究はほぼ行われておらず,その自伝的記憶の内容や発達的特徴は不明である.本研究では,日本人中高生に重要な自伝的な出来事を想起するようにもとめ,その内容と経験時の年齢,伴う感情などを調べた.まず,中高生男女が想起した内容をカテゴリーに分類した結果,カテゴリーは概ね共通し,学校に関する出来事(入学,卒業,部活動など)が多く含まれた.一部の出来事カテゴリーにおいて,中高差や男女差がみられた.また,中学生は12歳,高校生は15歳に経験した出来事をほかの年齢よりも多く想起することが示された.感情別に見ると,これらの時期に想起量の山がみられたのはポジティブ感情もしくは両方(ポジティブとネガティブが混ざっている)感情を伴う出来事のみであった.日本の中高生の自伝的記憶の特徴について,発達差や性差も含めて考察した.

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