認知心理学研究
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原著
就学前期のカテゴリー情報の利用:計数課題における対象のカテゴリー化を通して
高田 薫
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2005 年 3 巻 1 号 p. 33-43

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抄録
本研究では,異なるカテゴリーに属する対象を数える際に,どのようにしてカテゴリー情報を利用しているのかについて検討された.研究1から研究4では,Gelman & Tucker (1975) における実験と同様に,5歳児と6歳児に対して2つのカテゴリーに属する対象を数えるよう求めた.その結果,どちらの年齢でも,研究4を除いてすべての対象を一括して数える傾向にあり,研究1から研究3と研究4の違いは教示であった.研究1から研究3と研究4の結果を比較することにより,“ここにあるの数えて”という教示が異なるカテゴリーを無視することに影響を与えていることが議論された.研究5では,文脈情報がカテゴリー情報の利用に影響を与えているのかどうかについて検討するために,5歳児と6歳児に対して,5体のぬいぐるみに果物を配る課題状況で,3種類の果物(いちご,ぶどう,みかん)と1種類の野菜(大根)とが与えられた.6歳児の多くは,カテゴリーごとに数えたのに対して,5歳児では,数えるときにカテゴリー情報を利用していたものの,すべての対象を一括して数える傾向にあった.これらの結果から,6歳児は“何を数えるのか”を決めるのにカテゴリー情報を利用しているが,5歳児は与えられた対象すべての数を正確に数えるために利用していることが示された.
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© 2005 日本認知心理学会
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