日本生物学的精神医学会誌
Online ISSN : 2186-6465
Print ISSN : 2186-6619
新生仔期プロスタグランジンE2(PGE2)曝露による発達障害モデルマウスにおけるPGE2の役割
野田 幸裕肥田 裕丈
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 32 巻 3 号 p. 124-128

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抄録
精神疾患の発症には,神経細胞や神経回路網の発達障害が関与する神経発達障害仮説が提唱されている。環境的要因の曝露により種々の炎症性メディエーターが誘導されるが,プロスタグランジンE2(PGE2)を標的とした神経発達異常や精神疾患の病態との関連性は明らかにされていない。神経発達障害仮説に基づき,精神疾患の発症要因におけるPGE2の役割について検討した。新生仔期マウスに環境的要因として,ウイルス感染,低酸素,あるいは隔離飼育を曝露すると,共通的に脳内PGE2の発現量が増加した。新生仔期マウスにウイルス感染として,polyriboinosinic‐polycytidylic acid(Poly I:C)やPGE2を投与すると,成体期において精神行動異常が認められ,PGE2‐EP1拮抗薬によって緩解された。精神疾患の環境的要因におけるPGE2の役割を明らかにすることで,従来の向精神薬とは作用機序が異なる分子を標的とした新しい予防および治療薬の開発につながる。
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© 2021 日本生物学的精神医学会
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