認知心理学研究
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原著
表情認知に関わる顔の視覚的構造変数の再検討
渡邊 伸行鈴木 竜太山田 寛
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2006 年 3 巻 2 号 p. 167-179

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抄録

本研究では,表情認知に関わる顔の構造変数について検討を行った.従来の線画表情図形を用いた研究では,顔の構造変数として,“傾斜性”,“湾曲性・開示性”といった眉・目・口の相関的変位構造を示す二つの変数が見出されてきた.しかしその後の実際の表情画像および線画を用いた検討から,構造変数は上述の2変数ではなく,三つの変数である可能性が示された.この問題について検証するため,本研究ではYamada,Matsuda,Watari,& Suenaga (1993) の実画像研究に基づいて新たに生成した,実際の表情と同じ可変性を持つ102枚の線画を用いて,基本6表情(喜び,驚き,恐れ,悲しみ,怒り,嫌悪)のカテゴリー判断実験を実施した.線画の眉・目・口の特徴点変位を示すパラメータ値を説明変数,実験参加者のカテゴリー判断の一致率を反応変数とする正準判別分析を実施したところ,“眉・目の傾斜性”,“口部傾斜性”,“湾曲性・開示性”と命名できるような,実画像研究 (Yamada et al.,1993) とほぼ同様の三つの構造変数が見出された.この3変数で構成される視覚情報空間におけるカテゴリー判断の中心傾向を示す点を比較したところ,線画と実画像で基本6表情の相対的な位置関係が類似していることが示された.以上の結果から,表情認知に関わる構造変数は三つであり,線画と実画像で共通してこれらの変数に基づいて表情の判断が行われていることが示された.

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© 2006 日本認知心理学会
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