認知心理学研究
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自伝想起課題におけるエピソードの再認処理が気分一致記憶に及ぼす影響
野内 類兵藤 宗吉
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2007 年 5 巻 1 号 p. 71-78

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抄録

気分一致記憶とは,気分と一致した感情価をもつ刺激語の記憶成績が良くなる現象を指す.本研究は,自伝想起課題と修正自伝想起課題を用いて気分一致記憶を検討した.大学生90名をランダムに実験条件に割り振った(ポジティブ,ネガティブ,ニュートラル).ポジティブとネガティブ気分群は,気分誘導のために音楽を聴取した.各群の被験者には4秒間隔で刺激が呈示された.刺激は快語30語と不快語30語の形容詞を使用した.自伝想起課題の参加者は刺激語にあてはまるエピソードを生成し,それが自分の経験にあるかどうかの再認を行った.修正自伝想起課題の参加者は,刺激語から自分自身のエピソードを生成するのが簡単か難しいかどうかを判断した.実験の結果,自伝想起課題の再生率においてポジティブ気分でもネガティブ気分でも気分一致記憶が見られ,修正自伝想起課題では気分一致記憶が見られなかった.このことから,再認処理もしくは生成・再認処理が気分一致記憶の生起に重要であると考えることができる.

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© 2007 日本認知心理学会
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