認知心理学研究
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原著
手話の記憶における実演効果
加地 雄一仲 真紀子
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2008 年 6 巻 1 号 p. 21-33

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抄録

“ペンを持ち上げる”などの言語的指示を覚える際に,その行為を実演すると,しない場合に比べて記憶成績が向上する.これを実演効果と言う.本研究の目的は,実演効果が生じる境界条件を,日本手話を用いて検討することである.実演効果の有力な説として,記憶痕跡の運動的構成要素を重視する運動プログラム説がある.他方で,動作と対象の連合を重視するエピソード的統合説がある.これらの説が手話による実演効果に対してどれくらい適用できるか検討するために,手話の2つの属性を操作した.1つは手話の動作の再現しやすさの度合い(“再現容易性”)であり,もう1つは手話の動作から意味がどれくらいイメージできるかの度合い(“イメージ性”)である.実験1では,4つの種類の材料(高再現-高イメージ,高再現-低イメージ,低再現-高イメージ,低再現-低イメージ)を,実演,観察するか,言語材料を見るだけによって学習した.実験1の結果,材料の種類,学習条件による違いは見られなかった.しかし,イメージ性を最大にした実験2では,再現性の高い材料で実演効果が見られた.これらの結果を,諸説の説明可能性の観点から考察した.

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© 2008 日本認知心理学会
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