抄録
本研究は,問題解決におけるワーキングメモリ容量個人差の影響について検討することを目的とした.実験課題として,ワーキングメモリ上の処理資源を必要とする課題で数当てゲームの一種であるMastermindという簡易なゲームを用いた.実験においては,28名の実験参加者が実験に参加した.まず実験参加者は日本語版RSTによってリーディングスパンが測定された.次に,問題空間の異なる3種類のMastermind(2桁版,3桁版,4桁版) を行った.実験の結果,7名の低スパン群の被験者は,7名の高スパン群の被験者に比べて成績が劣り,特にもっとも問題空間の大きい課題 (4桁版) の場合,両群間の差は顕著であった.この実験結果をもとに問題解決におけるワーキングメモリ容量個人差と問題空間の影響について,ワーキングメモリにおける資源の領域固有性,汎用性,情報の制御機能という観点から考察を行った.