2008 年 61 巻 10 号 p. 1031-1035
大腸憩室からの出血の診断と治療には,下部消化管内視鏡が非常に有用である.
憩室からの新鮮血の流出あるいは憩室内に露出血管が確認できれば出血源と診断できる.しかし,大腸憩室は多発していることが多く,実際にはどの憩室から出血しているのかわからないことが多い.自然に止血されることが多い疾患ではあるが,抗血小板薬あるいは抗凝固薬を内服中の場合には自然止血後も再出血する危険があるため注意が必要である.
大腸憩室は筋層を欠く仮性憩室であるため,熱凝固法やエタノール局注などによる止血は,穿孔の危険があり控えるべきである.組織障害の少ないクリップによる止血がもっとも有用である.
内視鏡による診断あるいは治療が困難であり,出血が持続する場合には,タイミングを逃さずに血管造影または外科的手術を考慮する必要がある.