2009 年 62 巻 1 号 p. 65-71
患者は70歳台男性.便秘を主訴に近医を受診後,当院に紹介となった.CT,注腸造影,骨シンチグラフィーで多発骨転移を有する4型直腸癌と診断した.根治手術不能と判断し人工肛門造設術を施行し,粘膜下生検で低分化型腺癌と診断された.その後modified FOLFOX6を4回施行したが効果がなかったため,modified FOLFIRIに変更した.縮小効果を認め腹会陰式直腸切断術を施行した.切除標本の病理検査で組織学的CR(complete response)であった.しかし,休薬中に急激に骨髄転移の増悪をきたしDICの病態を示すようになった.抗DIC療法を行い再度mFOLFIRIが有効で病状コントロールができた.大腸癌原発巣の病理組織学的CRはめずらしい事,休薬中に急激に骨髄転移の増悪を来たした事,再度のmFOLFIRIが有効であった事など進行大腸癌治療に際し種々の示唆を与える貴重な症例と考え報告した.