2009 年 62 巻 5 号 p. 340-344
症例は56歳女性で2004年10月に直腸癌にて低位前方切除術,子宮合併切除術を行った.病理組織は中分化管状腺癌,pSE, ly1, v1, pN1(2/15),stage IIIaであった.その後,多発性の肺転移が出現し,外来で抗癌剤治療中(UFT, S-1)であったが,2007年6月に頸部腫瘤が出現し当科受診した.腫瘍マーカーはCEAが106ng/mlと上昇していた.甲状腺右葉に約4cmの腫瘍を認め,穿刺吸引細胞診でclass Vであった.増大傾向が早く,気管への圧迫も懸念され,8月に甲状腺亜全摘術を行った.大きさは右葉が3.5×2.0cm,左葉が1.1×0.7cmであった.病理組織は,壊死を交えた異型腺管の増生がみられ直腸癌の転移として矛盾しない像であった.比較的稀な直腸癌の甲状腺転移の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.