2015 年 68 巻 1 号 p. 1-12
従来の肛門吻合(CAA)やIntersphincteric resection(ISR)の発達により,外科的肛門管に及ぶ直腸癌でも肛門温存の可能な症例が増加している.しかし現時点で行われているISRにおいて,この手術法に対する考え方の混乱も見受けられる.腹腔側よりIntersphincteric planeを確認し,器械吻合を行った症例もISRとされていることも1つの理由である.現在のISRに対する認識は,SchiesselやRullierらが提唱するように経腹経肛門操作によるintersphincteric plane内での直腸剥離とDentate lineを指標としてその直上や肛門側の解剖学的肛門管で直腸と内肛門括約筋をen blocに切除し,CAAにより再建する手術法である.これは本学会の用語委員会において統一の見解とされ,(経腹経肛門的)括約筋間直腸切除術と呼ぶことで一致した.
本手術法ではある程度の多彩な排便障害を伴うが,最近の長期観察の報告では腫瘍学的予後および排便機能,QOLは許容範囲内とされている.