2015 年 68 巻 5 号 p. 312-317
症例は63歳女性.腹部超音波検査で虫垂の嚢胞性腫瘤を指摘され当院紹介となった.腹部造影CT検査で最大径21mm大に腫大した虫垂を認め,虫垂粘液嚢腫と術前診断した.悪性の可能性も否定できないことから,腹腔鏡下回盲部切除術+D2郭清を施行した.術後病理組織検査では虫垂粘膜の一部に軽度の核異型を伴い,低乳頭状増生,核の重積性を示しており,低異型度虫垂粘液性腫瘍(Low-grade appendiceal mucinous neoplasm:以下LAMN)と診断した.大腸癌取扱い規約第8版によると,虫垂腫瘍のうちLAMNは旧規約上の粘液嚢胞腺腫の大部分と粘液嚢胞腺癌の一部に該当し,今回新たに分類された.虫垂粘液嚢胞腺癌に対してはリンパ節郭清を伴う回盲部切除術以上の術式が必要であるが,粘液嚢胞腺腫に対しては虫垂切除術または盲腸部分切除術で十分という報告もある.LAMNの治療に関して現在明確な基準は存在しない.今後の症例の蓄積による検討が必要であり,国際的な診断基準・ガイドラインの構築が望まれる.